不滅の言葉 98年1号

ヒラマヤ山脈の膝元にて――神聖なる放浪(4)


スワミ・アカンダーナンダ

部分

   第三章 ガンゴートリ(上)

    ウッタルカーシー

 ヤマダグニャジ・マカムからウッタルカーシーへの旅は二日かかる。その道には頻繁に熊が出没する。丘陵民でさえこの道を一人で旅するのを避けている。途中には小さな村があった。この辺の人々は泥棒が何のことか知らなかった。自分の家や小屋に鍵を取りつけている人は一人もいなかった。私は深い森を通って二日間歩かなければならなかった。私がどんな野生動物にも出くわすことがなかったのは幸運であった。

 昔、幼い頃に、私は一頭の熊と二人の旅人の物語を読んだことがある。私が丘陵民たちから熊について聞いたことは、この物語を確かなものにした。丘陵民たちは私に忠告してくれた。森を通って歩いているときに熊に出くわしたなら、一片の布で顔を覆い、身動きしないで横になっていることだと。そうすれば、熊の方から何か事を構えてくることはないということだそうだ。熊は普通前足で相手の顔を殴り、その両眼をえぐる。だから、人は自分の顔を保護し、倒れて動かないでいなければならない。そうすれば、熊はその人に危害を加えることはないだろう。とにかく、私はこの策を自分が熊に出会ったときのために心に止めておいた。ヤマダグニャジ・マカムから来た男も、一日私と同行した。

 ウッタルカーシーは丘陵民に「バルハット」と呼ばれている。ここではガンガーは北に向かって流れている。そこにはカーシー族のヴィシュヴァナート寺院が一つあり、ほかにも多くの寺院がある。したがって、この土地は人にヴァラナシを思い起こさせるのである。それはあたかも主ヴィシュヴァナート(*シヴァ神の別名)がこの山の険しい場所に苦行で自己を滅却するために降りてこられたかのようである。私はウッタルカーシーを発ち、一日に約一九マイル(約三〇・四キロメートル)の距離を歩いた後、バトワリに着いた。途中、私は数人のマハーラシュトラから来た巡礼に出会った。彼らは私に食べものをくれた。私は真昼に少し食べ、しばらく休んでから私の旅を再び続けた。私はその日は一日中歩き続けた。
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