不滅の言葉 97年6号

ホーリーマザーの福音(7)

スワミ・アルパーナンダ


ホーリーマザー(シュリ・サラダデーヴィ)

部分

   ウドボーダン

    一九一二年二月一日

 ホーリーマザーにお目にかかりに行ったのは午後の九時半頃だった。その日はまる一日お会いしていなかったので、マザーが「今日は一日中どこにいたの?」とおっしゃった。

 弟子「階下で、経理事務に追われておりました」

 マザー「プラカッシュにそう聞きました。出家した人にとってはそんな仕事はつまらないことでしょうねえ。いちど、師に支給されるお金に計算違いがあって、少なく支払われていました。私は寺の責任者に話すよう師に申しました。でも彼は『恥を知りなさい! どうして私が計算などしなければならないのだ』とおっしゃいました。またあるとき彼は私に『何を心配するのだ、神の御名を唱えるものは決して困窮することはない』とおっしゃいました。これは私が直に聞いた師のお言葉です。彼の放棄は宝石の王冠のようでした。

   ウドボーダン

    一九一二年二月八日

 礼拝室の隣の部屋の北側には敷物がしかれていた。朝にマザーはよくそこにお座りになった。時には東のほうを向いてジャパ(*唱名)をなさった。マザーと話をしに来ると私たちもいつもそこに座った。今日もマザーはその敷物に座っておられた。

 弟子「マザー、あなたはどれくらいダクシネシュワールにお住まいになったのですか?」

 マザー「そうねえ、ずいぶん永いこといましたよ。一六歳(注一)のときに行って、それ以来ずうっとでしたからね。たまに、ラームラルの結婚式があったようなときなどには、村の実家に帰りました。二、三年に一度くらい帰っていたかしら」

 弟子「いつもお一人だったのですか?」

 マザー「ええ、ときにはね。ときには義母といっしょでした。ゴラップやゴウルダーシや他のものがいっしょのときもありました。私たちはあの小さな部屋で料理をしたり、寝たり、食べたり、なんでもしたものです。

 「私は師のための料理をつくりました。彼はよく消化不良をおこされたので、カーリー寺院からのお下がりのご馳走をお食べになることができませんでした。私は師の信者たちの食事もつくらなければなりませんでした。ラトゥが師といっしょに住んでいました。ラーム・ダッタと意見の食い違いが生じて、来ていたのです。師は私に『彼は良い子だよ。おまえのために粉を練ってくれるだろう』とおっしゃいました。昼も夜も料理をしましたよ。たとえばラーム・ダッタがやってきて車から降りて、『今日はチャパティ(インドのパン)とダル(スープの一種)を食べます』と大声でいうと、私はすぐに支度をはじめたのです。いつでも麦粉三、四シーア(*一シーアは約九百グラム)分のチャパティをつくったものでした。ラカールが住んでいたときには、彼のためによくキチュリをつくりました。ある日師がナレンのためにおいしい料理をつくってくれとおっしゃいました。私はムーン・ダル(緑のひよこ豆)のスープとチャパティをつくりました。食事の後、師がナレンに『おいしかったかい?』とお訊きになりました。『ええ、とても』とナレンは答えました『でも、病人食のようでした』。それを聞いて師は私に『いったいどんなものを彼に食べさせたのだ? 濃厚なダル・スープとチャパティをつくってあげなさい』とおっしゃいました。結局私はもう一度食事をつくりなおし、ナレンはとてもよろこんで食べました。スレン・ミトラが信者たちの出費のために毎月十ルピーくれました。年長のゴパールが買い物役でした。踊りや賛歌や恍惚境、そしてサマーディが昼も夜もつづきました。それを見ようと、私たちは竹製の目隠しの壁に小さな穴をあけました。あまり穴の前に立っていたものだから、私はとうとうリューマチに罹ってしまったのです。

 「ひとりのお婆さんがよくやって来ました。彼女は不道徳な生活をしてきた人でしたが、すでに年老いて、宗教的になっていました。私はひとりでしたから、その人が来るといつも話をしました。ある日師がそれをごらんになって、『どうして彼女をここに入れるのだね?』とおっしゃいました。私は『あの人は今では良い話しかしないのですよ。神さまのことばかり話しています。それがどうしてよくないのでしょう? 人の心が昔の生活にいつまでも汚されつづけるはずがありません』といいました。師は『いやいや、彼女は堕落した女性だ。どうして話をするのだ? いまは変わったかもしれないが、近寄らないほうがよい』と言われました。師は、そのような人たちの悪い影響を私が受けることがないようにと、彼らと話しをすることさえお禁じになったのでした。それほど厳格に私を守ってくださいました。......................


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