NIPPON VEDANTA KYOKAI
Vedanta Society of Japan
不滅の言葉 1965年2号

人間人格の五重層(其二)
木村日紀

 前回(十二月号)に続いて「社会人としての人格」に就て述べると、社会は人間の衆合生存の場であり人間は社会との関係なくしては生存不可能である。たとえ人間は社会に於いて個人として生活するもそれは「唯我者」としての個人でなく、絶えず他と関係し絶えず他の支援と恩恵を受ける者である。これが人間の社会に生きる「姿」である。斯くて社会的共同精神の具現と共に常に社会に感謝することが社会人としての人格である。ここに天地に恥づべき社会現象はその跡を絶つこととなる。次に「国民としての人格」に就て述べると、人間は社会人であると同時にまた一面国家人即ち国民である。国家に統治され、憲法其の他の法律を背景とする統治権によって凡ゆる保護を受け、個人の生活や家庭の維持に安全を得ているのである。斯る国家的恩恵に対して国民は国民道徳を高め、国民的義務を尽し、感謝の念をもって現代の如き世相の浄化を必要とする時代には国位向上に貢献すべきである。斯くする処に「国民としての人格」が具現し来るのである。次に「世界人としての人格」に就て見ると。世界東西の接触は西暦前四世紀から数世紀を経て成立し、次いで文化の交流となり、物資の交換と発展し、現今では各種の学会を始め、通信、交通、金融、交易、競技、技術、音楽、舞踊、映画等凡ゆる面が国際的に連結し、世界は全く一体化し共同化し、世界聯邦も間近に実現するの姿となって来た。従って各国各国民は世界の共同的支援なくしては個人の生活も国家の興隆も出来ない有様となって来た。斯く国際的共同体より受ける恩恵は将来並々高まるものと信ずる。ここに吾人は国際的共同精神を高め、全人類に対する感謝を深めねばならぬ。ここに世界人としての人格の具現がある。これが人間道徳の根幹である。

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